大道 公秀(生活科学部食生活科学科准教授)
(食品産業学、食品開発、機能性食品)
『カツオの古代学: 和食文化の源流をたどる』
三舟 隆之?馬場 基 編
出版社:吉川弘文館(2024年5月)
出汁(だし)として日本の伝統的な食文化であるカツオ。奈良?平安時代、駿河?伊豆産のカツオは税として遠く都まで運ばれたが、長距離移動を可能にした保存加工法には謎が多い。調理?運搬用の土器や木簡など考古?文献史料を多角的に検証し、さらに最新の科学技術によるデータ分析で古代の調理法を再現実験。今なお受け継がれるカツオ文化の基層に迫る。
■著者より
カツオは日本人の食生活に欠かせない存在です。古代からカツオ製品は存在していたとされています。しかし、それらがどのような食品であったかは明らかにされていませんでした。この本では学際的に、古代のカツオ製品を解明する試みが紹介されています。
さて、私は、「古代の堅魚製品再現への挑戦」の章のうち、「カツオ煮汁のコゲ分析からの起源類推アプローチ」を分担執筆しました。古代の土器にはコゲが付着しているものがあります。それらは、その当時の食品を煮炊きしてできたものと考えられます。そこで、私はそのコゲに着目して、当時の食生活を探る研究に関わってきました。伊豆ではカツオを煮たとされる土器も出土しています。その土器分析から得られる知見が期待されるところでもありますが、その際には、考察の参考となるべく、カツオ煮汁炭化物での科学的特性に関する検討も必要です。そこで、カツオ煮汁炭化物の科学分析も行い、知見を蓄積しています。図書の中で、このような私のアプローチを紹介しています。
■目次
はじめに 馬場 基
Ⅰ 文献史料からみた古代のカツオ
日本列島とカツオ 馬場 基
『延喜式』からみた堅魚製品 小倉 慈司
Ⅱ 考古資料からみたカツオ
堝形土器とカツオ加工—沼津市域での出土事例から— 小崎 晋
古代駿河?伊豆地方における土師器堝の展開とその特質 藤村 翔
古代におけるカツオ漁の再検討—駿河湾沿岸からの視点— 山崎 健
堝形土器の考古生化学的分析からわかること 村上 夏希?庄田 慎矢
駿豆産の須恵器長頸瓶と「堅魚煎汁の容器」説 森川 実
須恵器壺Gとはどのような容器か? 小田 裕樹
Ⅲ 古代の堅魚製品再現への挑戦
古代堅魚製品の再現実験—「荒堅魚」と?煮堅魚?— 三舟 隆之?馬場 基
塩カツオ漬け汁の微生物学的検査からみた塩カツオの保存性 金田 一秀
コラム1 古代堅魚製品の調理再現実験…西念 幸江
カツオ煮汁のコゲ分析からの起源類推アプローチ 大道 公秀
鰹色利の保存性と壺G 三舟 隆之?五百藏 良
鰹色利の粘性 峰村 貴央
コラム2 栄養学からみたカツオの食文化—女性の健康の視点から— 鈴木 礼子
Ⅳ 特別寄稿
田子地区に伝わる潮鰹づくり 芹沢 安久
Ⅴ カツオの古代学—シンポジウム総合討論—
あとがき 三舟 隆之